たかが短文、されど短文。語学力=翻訳スキルではないと悟った日。

私はイタリア語の通訳案内士(通訳ガイド)の資格を持っています。ですが、ガイドは本職ではないこともあり、なかなか日常イタリア語を使う機会はありません。なので、多少でもそういった機会にめぐり合えればと思い、国際交流協会の外国語ボランティアに登録しています。

一般的に、「外国語で日常会話ができる人は、翻訳もできるはず」と考えられる傾向が強く、ゆえにたまに翻訳の依頼を受けることがあります。例えば、私が以前依頼を受けたのは、メロンの栽培に関するリーフレットの日本語からイタリア語への翻訳でした。

しかし、実際のところ外国語が話せ、ある程度コミュニケーションが取れるからといって、翻訳もできるというわけではありません。翻訳はまた別のスキルが必要です。日本語が口語と文語で異なるように、他の言語も同じこと。また、専門的な内容になると、そもそもその事柄に関する知識も要求されるのです。私は農業はもちろん、メロンに関する知識もごく基本的なものしかありません。

加えて、ストレートに置き換えられる言葉がないと、それについて説明する必要もあるのです。そのため、文字数にしてみれば日本語で全部で5000字にも満たなかったと思うのですが、3日もかかったうえに知人のネイティヴにダブルチェックをお願いするしかありませんでした。極力シンプルな表現を心がけて訳しましたが、校正してもらったものはさらに余計なものを削ぎ落とした、すっきりとした文章になりました。あらためて「そうか、この言い回しの方がいいのか」と目から鱗が落ちる思いでした。

この一件以来、安易に翻訳の依頼は受けないことにしています。正しく相手に伝え、理解してもらいたいからこそ、いい加減な真似はしたくありませんから。翻訳という技術の難しさを、もっと多くの人に知ってもらいたいと思います。